現在の宇宙開発技術においては衛星画像がもたらすプライバシー問題、衛星軌道の配分の問題など、さまざまな現実の問題が生じつつあります。他方では、宇宙技術の延長線上には地球外生命体とのコンタクトの倫理、テラフォーミング(地球以外の惑星を住みやすいように改造すること)の倫理など、SF的ながら、既存の倫理学の枠組みを問い直すような問題圏も存在します。本センターでは、この両方に対応する倫理学の新しい領域として、宇宙倫理を研究課題として掲げ、宇宙総合学研究ユニットなどの学内研究グループと協力して研究を進めています。
宇宙科学技術社会論(SSTS)
本研究プロジェクトの目的は、宇宙科学技術の社会的インパクトを明らかにするとともに、宇宙へと活動領域を広げつつある社会が直面する諸課題とそれに対する対応策を特定することで、宇宙科学技術と社会の望ましい関係性を構想することにある。また、このことを通して、将来的に「宇宙科学技術社会論(SSTS: space science and technology studies)」という新しい学術領域を確立するための基礎を構築する。
ウェブサイト
宇宙倫理学研究会
宇宙倫理学研究会設立の主旨
「宇宙倫理学」とは、人間と宇宙との関わりにおいて生じうる様々な道徳的問題を検討する分野で、応用倫理学の最先端と言えます。
火星や小惑星への探査が進み、民間宇宙旅行の夢に現実味が出てきたのを目にして、わたしたちは宇宙空間が次第に身近なものになりつつあるという実感を覚えます。また、このままでは近い将来に破局をもたらす資源問題や人口問題に直面し、小惑星や彗星の衝突による絶滅の可能性を認識して、宇宙資源の開発や宇宙への移住すらも存続のための選択肢として真剣に考慮する必要に迫られているのかもしれません。こうして、21世紀に生きるわたしたちにとってその生存圏を宇宙へ拡大させることは、単なる夢ではなく一つの現実的な課題という意味をもっていると言えるでしょう。
しかし人間の宇宙進出は、既存のシステムでは対応できないような倫理的/法的/社会的問題を生み出すことが予想されます。そこで、これらの問題に体系的な仕方で取り組み、「宇宙を生存圏とする生物としてわれわれがどう生きるべきか」を理解することを目指して、本研究会を設立しました。
活動の概要
ビジネスや科学・技術、安全保障といった形での宇宙利用に関わる現実的な問題から、宇宙規模の環境問題、人間の身体・精神・社会の変容、地球外生命との遭遇といったSF的な問題まで幅広く扱います。
具体的な活動予定としては、年に数回の例会を開催することを通して宇宙倫理学および隣接分野(宇宙政策など)のこれまでの議論状況を紹介しつつ、国内では初、世界でも有数となる宇宙倫理学本(論文集)の刊行を目指しています。
参加メンバー
伊勢田哲治(代表/京都大学大学院文学研究科・宇宙総合学研究ユニット)
磯部洋明(京都大学大学院総合生存学館・宇宙総合学研究ユニット)
稲葉振一郎(明治学院大学社会学部・京都大学大学院文学研究科CAPE)
大庭弘継(九州大学比較社会文化研究院)
神崎宣次(副代表/滋賀大学教育学部・京都大学大学院文学研究科CAPE)
呉羽真(連絡係/大阪大学先導的学際研究機構・京都大学大学院文学研究科CAPE)
清水雄也(一橋大学大学院社会学研究科)
杉原桂太(南山大学理工学部システム数理学科)
杉本俊介(大阪経済大学経営学部)
水谷雅彦(京都大学大学院文学研究科・宇宙総合学研究ユニット)
吉沢文武(千葉大学大学院人文社会科学研究科)
主催
京都大学宇宙総合学研究ユニット
京都大学大学院文学研究科CAPE(応用哲学・倫理学教育研究センター)
研究会開催情報については宇宙総合学研究ユニットの当研究会のページをご覧
ください。
http://www.usss.kyoto-u.ac.jp/research/spaceethics.html