失礼します。
私は法学を主に勉強しています。
さて、最高裁判例(最判平成19年3月8日民集61巻2号518頁。http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=34239) では、近親婚を禁止する民法734条1項について「社会倫理的配慮及び優生学的配慮という公益的要請」を理由としています。
しかし、優生学的配慮で婚姻禁止にするのが許されるなら、高確率で遺伝する障がいや難病を持つ人にすら婚姻を禁止できることになりかねないと思っています。(そちらも禁止しろと考えるなら整合性の問題はないかもしれませんが、私は支持しません。)
また、子を持つつもりがないカップルからも一律に婚姻の機会を差別的に奪う点もあります。
同性婚の法制化が議論されますし、(法律婚制度廃止しない前提なら)同性婚は認めてよいと感じますが、近親婚、中でも特にきょうだい婚は認められてよいと考えています。
「優生学的配慮」などを理由に近親婚を国家が禁止することは、(特に旧優生保護法が問題視される昨今、)整合性を保った形で合理的な説明が可能なのでしょうか。
この点、法の下の平等を保障した日本国憲法があるのに、なぜか管見の限りでは法学の世界でも近親婚規制の差別性の議論があまりされていないように感じています。
大変貴重なご質問ありがとうございます。ご意見の通り、近親婚を禁じる良い理由はないように思います。
私も優生学的な配慮はよい理由ではないと思いますし、また社会倫理的配慮というのも結婚の自由を制約するよい理由ではないと思います。
近親相姦のタブーは生物学的な根拠も指摘されるところですが(ウェスタマーク効果)、だからといってそれに基づいて
近親婚を法的に禁じることは認められないと考えます。
自発的な合意を保証するためにどの関係(きょうだい、親子など)であれば認めるべきかについては議論がありうるかと思いますが、
原則として、近親婚を禁じることは結婚の自由に対する不当な制約のように思われます。
ただし、同性愛に対する昨今の(以前よりも)寛容な態度に比べて、近親婚に対しては強い不寛容があるように
思いますので、このような不寛容を克服する方法を考える必要があるかと存じます。